日本学術会議後援 オールつくばネットワークシンポジウム
福島第一原子力発電所事故由来放射性物質調査研究 分野横断ワークショップ開催


 東京電力福島第一原子力発電所の事故から間もなく3年が経過しようとしています。放射性物質が環境中に大量に放出され,さまざまな媒体に汚染が拡がる事態に対し,初期には十分な実態把握すら困難な状況もありましたが,その後,放射性物質の環境中での動態や影響の評価,廃棄物処理や除染といった対応策などに関する調査研究が多岐にわたって進められ,成果も蓄積されてきました。こうした活動は,大学や国立研究機関など数多くの機関の専門家によって担われ,関連する学術分野は多岐にわたり,また学会も数多くあります。学会ごとにこの問題に特化した分科会を設けるなどの活動も行われていますが,事故由来の放射性物質に関して,どこでどのような調査研究が行われてきたのかの全貌を把握することは容易ではありません。
 原子力規制行政の再編後も事故由来放射性物質に関する調査研究について政府側では一元的な動きがみられない状況にあり,日本学術会議東日本復興支援委員会放射能対策分科会により,平成24年4月の提言に続く第二次提言案(審議中)において,府省横断的・領域横断的な調査・研究体制の構築の必要性が指摘されています。事故後3年という時期は,除染や避難指示の解除・帰還といった対応においても一つの転換期であり,放射性物質の環境動態を踏まえた中長期的な的確な対応につなげていく上でも,これまでに得られた主な知見や現在進行中の主な調査研究について,「棚卸」を試みるべき時期であるといえるでしょう。
 本ワークショップは,大規模な研究プロジェクトの実施,複数の機関による新たな研究体制の構築,関係省庁における対応策の検討への参画などを通じて,こうした問題意識を共有する有志が発案して企画を練ってきたものです。各有志が持つ専門家のネットワークをさらに繋げることによって,この度,さまざまな分野の専門家が一堂に会するワークショプを開催することが出来ました。機関や学会の壁にとらわれることなく,情報の共有と整理を集中的に行うことで,事故後3年間に進められてきた調査研究を,包括的な成果として社会に広く公開することが可能となるでしょう。


poster image ▼ワークショップ終了後、録画を公開しています▼
http://www.ustream.tv/channel/alltsukuba2014

▼プログラム内のリンクから資料(PDF)をご覧いただけます▼
●日時:2014年3月16日(日)13:00-16:30
●場所:筑波大学総合研究棟A110
●定員:60名
●プログラム
<オープニング>(13:00~)
 ・挨拶/松本 宏 (筑波大学アイソトープ環境動態研究センター長)
  ・世話人からの趣旨説明/森口 祐一 (東京大学)
 ・日本学術会議 春日文子副会長
  「日本学術会議放射能対策分科会第二次提言について」
<テーマ別グループからのプレゼンテーションと質疑応答>(13:30~)
 ・各グループ:発表15分,質疑20分
 [第1グループ]放出、拡散、線量評価、測定手法/森口祐一(東京大学)
 [第2グループ]地表沈着後の実態・動態/恩田裕一(筑波大学)
 [第3グループ]人工システム内での移行と制御、環境回復/大迫政浩(国立環境研究所)
 [第4グループ]専門的・科学的知見と社会との対話/佐倉統(東京大学)
<総合討論>:今後の取り組みに向けて(16:00~)

参加予定者(敬称略)(2月12日現在)

[第1グループ]:「放出、拡散、線量評価、測定手法」
森口祐一(東京大学・工学系研究科・都市工学)・百瀬琢麿(日本原子力研究開発機構・核燃料サイクル工学研究所)・山澤弘実(名古屋大学・エネルギー環境工学)・高橋知之(京都大学・原子炉実験所)・鶴田治雄(東京大学・大気海洋研究所)・大原利真(国立環境研究所・地域環境研究センター)・渡邊 明(福島大学・共生システム理工学類)・五十嵐康人(気象研究所・環境応用気象研究部)・栗原 治(放射線医学総合研究所・緊急被ばく医療研究センター)・桝本和義(高エネルギー加速器研究機構・放射線科学センター)・上蓑義朋(理化学研究所・仁科加速器研究センター)・小豆川勝見(東京大学大学院・総合文化研究科)・内藤 航(産業技術総合研究所・安全科学)<第3グループ兼>
[第2グループ]:「地表沈着後の実態・動態」
恩田裕一(筑波大学・福島大)・中山真一(日本原子力研究開発機構・安全研究センタ-)・斉藤公明(日本原子力研究開発機構・福島環境安全センター)・飯島和毅(日本原子力研究開発機構・福島技術本部)・矢板 毅(日本原子力研究開発機構・量子ビーム応用研究部門)・林 誠二(国立環境研究所・土壌環境研究室)・今泉圭隆(国立環境研究所・環境リスク研究センタ-)・谷山一郎(農業環境技術研究所・研究コーディネータ)・江口定夫(農業環境技術研究所)・山口紀子(農業環境技術研究所)・万福裕造(国際農林水産業研究センター)・金子真司(森林総合研究所・立地環境研究領域)・三浦 覚(東京大学・大学院農学生命科学研究科)・塚田祥文(福島大学・環境放射能研究所)・難波謙二(福島大学・環境放射能研究所)・荒居博之(筑波大学・生命環境科学・環境バイオマス共生学専攻)・神田穣太(東京海洋大学・海洋科学系)・青山道夫(福島大学・環境放射能研究所)・五味高志(東京農工大学・大学院農学研究院)・高橋隆行(福島大学・環境放射能研究所)・吉田 聡(放射線医学総合研究所・福島復興支援本部)<第3グループ兼>・村上道夫(東京大学・生産技術研究所)<第3グループ兼>
[第3グループ]:「人工システム内での移行と制御、環境回復」
佐藤 努(北海道大学・環境地質学)・大迫政浩(国立環境研究所・資源循環・廃棄物研究センター)・保高徹生(産業技術総合研究所・地圏環境リスク研究グループ)・吉田 聡(放射線医学総合研究所・福島復興支援本部)<第2グループ兼>・村上道夫(東京大学・生産技術研究所)<第2グループ兼>・山田一夫(国立環境研究所・資源循環・廃棄物研究センター)・倉持秀敏(国立環境研究所・資源循環・廃棄物研究センター)・横尾善之(福島大学・共生システム理工学類)・細見正明(東京農工大学大学院・工学研究院)・大野浩一(保健医療科学院・生活環境研究部)・米田 稔(京都大学・都市環境工学)・大越 実(日本原子力研究開発機構・福島技術本部)・武部慎一(日本原子力研究開発機構・バックエンド推進室)・井上 正(電力中央研究所)・山田裕久(物質・材料研究機構・環境再生材料ユニット)・内藤 航(産業技術総合研究所・安全科学)<第1グループ兼>
[第4グループ]:「専門的・科学的知見と社会との対話」
茨木 希(オハイオ州立大学・地球科学学科)・木村 浩(特定非営利活動法人パブリック・アウトリーチ研究企画部・研究統括)・飯本武志(東京大学・環境安全本部)・佐倉 統(東京大学・情報学環)・山口一郎(国立保健医療科学院・生活環境研究部)・土屋智子(特定非営利活動法人HSEリスク・シーキューブ)・田中幹人(早稲田大学政治経済学術院 ジャーナリズム・コース)・市野美夏(早稲田大学・現代政治経済研究所)・菊地乃依瑠(早稲田大学)・吉戸智明(筑波大学計算科学研究センター広報室)