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山中 勤教授の研究が日経サイエンス最新号に紹介

筑波大学生命環境系・放射線・アイソトープ地球システム研究センター(CRiES)の 山中 勤教授らによる研究内容が、日経サイエンス 2026年1月号特集「深部流体に迫る」で紹介されました。
特集では、日本列島の地下深部を循環する「深部流体(Deep Fluid)」と地震・火山活動との関連に焦点が当てられています。深部流体とは、地球内部のマントルや沈み込む海洋プレートから上昇してくる水の総称で、その動きは温泉水や火山岩の成分から読み解くことができます。言い換えれば、これらの自然現象は「地下からの手紙」ともいえる存在です。
記事では特に、有馬温泉地域における長年にわたる深部流体の動きを山中教授らが解析した成果が紹介されています。研究チームは、温泉水に含まれる水素・酸素の安定同位体比を分析することで、深部流体の供給量が 阪神・淡路大震災の前後で一時的に急増していたことを突き止めました。推定では、当時26万~42万立方メートルもの深部流体が地下深部から押し寄せた可能性が示されています。
この知見は、深部流体の振る舞いが地震活動に影響を与える可能性を示す重要な手がかりであり、地震発生メカニズムの理解に向けた新しい視点を提供するものです。また、中部日本が世界的にも稀な“地下豪雨地帯”であることが明らかになっています。
さらに、今回の記事で取り上げられた研究成果の中心となる 2つの国際論文(Adachi and Yamanaka, 2024; Journal of Hydrology/Yamanaka and Adachi, 2024; Communications Earth & Environment) は、今年度の水文水資源学会論文賞を受賞しました。両論文はいずれも超深層水循環に関する研究であり、国内外から高く評価されています。
本研究は、超深層水循環と地殻活動の関連解明における先端的成果であり、災害科学・地震予測研究にも新しい道を拓くものです。
特集記事の詳細は日経サイエンス2026年1月号に掲載されています。ぜひご覧ください。

(関連論文)

  • Adachi, I., & Yamanaka, T. (2024). Isotopic evolutionary track of water due to interaction with rocks and its use for tracing water cycle through the lithosphere. Journal of Hydrology, 628, 130589. DOI:10.1016/j.jhydrol.2023.130589
  • Yamanaka, T., & Adachi, I. (2024). Hot springs reflect the flooding of slab-derived water as a trigger of earthquakes. Communications Earth & Environment, 5, 459. DOI:10.1038/s43247-024-01606-1

【研究担当】
山中 勤(筑波大学 生命環境系/CRiES)
専門:水文学・自然地理学