放射性物質環境移行部門では、原子力発電所事故による放射性物質の環境影響を解明するため、福島大学環境放射能研究所と協働で環境中の放射性物質の分布状況及び移行メカニズムについて総合的な研究を行います。
特に森林・陸域環境中での水・土砂流出による放射性物質の移行モニタリング調査と将来予測のためのモデリング研究を推進します。
森林環境中の放射性物質の移行
福島第一原子力発電所事故による放射性物質の影響地域の 約70%を森林が占めており、土壌から植物への吸収や、周辺地域への放射線の影響解明のためには森林環境中での放射性物質の挙動を理解することが重要です。
当研究部門では、森林内での放射性物質の分布や移行状況を詳細にモニタリングすることにより、森林環境中での放射性物質の移行メカニズムの解明や、将来の移行状況の予測に役立つ観測データの取得に取り組んでいます。
様々な土地利用からの土壌侵食による射性物質の流出
地表に沈着した放射性物質は、土壌粒子とともに環境中を移行することが知られています。
当研究部門では、様々な土地利用での土壌侵食量のモニタリングデータに基づいて、土砂流出に伴う放射性物質の移行パラメータを推定し、土壌侵食数値モデルと各種空間情報を地理情報システム(GIS)により統合した広域的な放射性物質移行予測手法の構築を目指します。
河川を通じた放射性物質移行の長期予測
地表に沈着した放射性物質は、水や土砂の動きとともに河川を通じて下流域へ拡散し、海洋へと流出します。河川を通じた放射性物質の移行量を長期的に予測することは、流域の住民の安全安心な生活の支援につながります。
当研究部門では、福島県及びその近県の河川を対象として、出水時及び平水時の河川水に含まれる放射性物質濃度を測定することにより、河川を通じた放射性物質移行量を長期に亘って予測可能なモデルの開発に取り組んでいます。
国内外の研究機関との協働
チェルノブイリ事故等による長期的な放射性セシウム移行状況の観測データを蓄積している国内外の研究機関と協働することにより、福島第一原子力発電所事故影響の早期解決を目指します。
また、国際原子力機関(IAEA)の技術協力を得て、わが国の放射性物質モニタリングを国際的評価に耐えられる水準に高めるとともに、各省庁の政策に対し技術支援を行うことにより福島原発事故の解決に貢献します。