本研究の目的
2011年3月11日の東日本大地震および津波の発生を契機として、東京電力福島第一原子力発電所の事故が併発した。
原子炉施設から放射性核種が福島県周辺地域に飛散し、大気の拡散輸送過程により全球に拡散した。
沈着した放射性核種は、事故発生後1年以上を経て、短期予測や除染などの対策基盤策定のための調査から、長期予測を視野に入れた学術研究の必要性が高まっている。
今後は地表面に降り積もった放射性物質の再飛散や、海洋や河川湖沼の放射性物質の吸着した土砂の移動、森林・農作物、陸・海洋生物への移行が問題となり、さまざまな循環・相互作用が介在するからである。
この放射能汚染は、各学問分野の単独的取り組みでは解決できない複合的で未曾有の問題であり、地球環境科学の多くの分野に、放射化学や放射線計測技術の分野などを加えた分野横断的で新しい学問領域を創設して取り組むことが必須である。
こうした長期的な環境中の放射性物質の移行および環境動態予測に、研究者が英知を結集させて取組み、世界をリードする新たな研究領域の形成を目指す。
Information
「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究」にA+評価
日本学術振興会は26日、「平成29年度『新学術領域研究(研究領域提案型)』中間・事後評価に係る領域代表者からの報告・科学研究費補助金審査部会における所見」を発表し、恩田裕一先生が代表を務める研究領域「福島原発事故により放出された放射性核種の環境動態に関する学際的研究」が、A+評価を頂きました。
A+評価は「研究領域の設定目的に照らして、期待以上の成果があった」研究に対して与えられるもので、今回、事後評価22研究領域中、本研究を含めて4領域に与えられました。
今回の研究は2011年の東日本大震災を契機とした東京電力福島第一原子力発電所の事故によって原子炉施設から放出された放射性物質の福島県とその周辺地域おけるに飛散・沈着に着目したものです。本領域研究では、オールジャパン体制で放射性物質の拡散・輸送・沈着・移行過程を同定し、その実態とメカニズムを解明すること、及びそれに基づいて長期的な汚染状況の予測と被ばく線量の低減化のための方策を提示することを目的としています。成果の一つとして、大気中に放出された放射性物質の排出量推定と動態に関するモニタリングとシミュレーションに関する手法を確立しました。
科学研究費補助金審査部会における所見では「進行中の様々な問題をトップダウンではなくボトムアップ的に正確に捉えて柔軟に対応し、学術的に質の高い成果を生み出してきたという点で高く評価できる」、「新たな研究領域の確立に成功している」と評されました。
結果について「研究成果が顕著であること」に加え、「若手研究者の成長を目的とした研究プログラム」、「メディアを利用したアウトリーチ活動の実施」「包括的な日英の書籍の刊行に貢献」など、意義のあるさまざまな活動も高評価につながったとしています。
今回のA+評価を受け、「ともに尽力いただいた皆様のおかげでこのような高評価を受けることができた。日本科学未来館で3月に開催される『原発事故から7年。放射能汚染の状況はどこまで回復したか。』と題するシンポジウムで、今回の研究成果を紹介したい。」と恩田先生。「今後も皆様の協力を受け、進めてゆくことができれば」と言葉を寄せました。
参考リンク
【文部科学省】平成29年度事後評価対象研究領域一覧(22研究領域)
【文部科学省】平成29年度「新学術領域研究(研究領域提案型)」中間・事後評価に係る領域代表者からの報告・科学研究費補助金審査部会における所見(P61, 62に掲載。PDF: 2,176KB)
「IPE」x「ENEP」共同企画 特別合同セミナー開催のお知らせ
来たる2018年2月22日・23日の両日、総合研究棟Aにおいて、IPE(放射性物質環境動態・環境および生物への影響に関する学際共同研究)xENEP(原子力災害による環境・生態系影響リスクマネージメント)の共同企画で特別セミナーが開かれます。22日はイタリア・ロンバルディア州環境放射線防護センターよりDr. Rosella Rusconiをお招きし特別講演を行います。翌23日には共同研究における年次報告会を開催。22日夕刻に予定されている懇親会と合わせ、奮ってご参加ください。
詳細は下記リンクをご確認ください。
【ENEP】
特別合同セミナーのご案内(https://enep.ied.tsukuba.ac.jp/news/1050)
【IPE】
年次報告会について(http://www.ied.tsukuba.ac.jp/ipe/news/20180222-23.html)

平成29年3月15日から3月17日に、ランカスター大学の Lancaster Environment Centreにて行われた「CEH radioecology course」を受講した、藤井 健悟 氏(明治大学)からの報告です。
[PDF/714KB]

平成29年1月9日から1月28日までの約3週間、ノルウェー生命科学大学(Norwegian University of Life Sciences)にて放射生態学(Radioecology)の短期集中コースを受講した、三浦輝 氏(東京大学)からの報告です。
[PDF/640KB]
第3回福島大学環境放射能研究所成果報告会開催のお知らせ

平成29年3月14日(火)、第3回福島大学環境放射能研究所成果報告会が平成29年3月14日に開催されますので、是非ご参加ください。
※詳細はプログラム(PDF/2,081KB)をご覧ください。
新学術領域研究でのこれまでの成果をまとめた書籍が出版されました!
『原発事故環境汚染 福島第一原発事故の地球科学的側面』
中島 映至, 大原 利眞, 植松 光夫, 恩田 裕一 編
一般財団法人 東京大学出版会発行
ISBN978-4-13-060312-6
発売日:2014年10月06日, 判型:A5, 312頁
学会情報・シンポジウム情報
共同セミナー "Further understanding of radiocaesium dynamics between land-sea area; comparison between and Fukushima"
開催日:2018年10月29日(月)
会場:福島大学環境放射線研究所 (福島県福島市金谷川1番地)
申し込み:
こちら
問い合わせ:IER事務局(電話:024-504-2114, メール:ier at adb.fukushima-u.ac.jp ※atを@に置き換えてください)
日時:2018年2月19日(月) 10:00~17:20
会場:茨城大学水戸キャンパス図書館3階ライブラリーホール (茨城県水戸市文京2-1-1)
参加費 : 無料 ※事前のお申し込みは不要です。直接会場へお越しください。
主催:茨城大学理学部
※発表はすべて英語で行われます。通訳はありませんのでご注意ください。
会期:2018年5月20日(日)~5月24日(木) 5日間
会場:千葉県 幕張メッセ 国際会議場,国際展示場 Hall 7 / 東京ベイ幕張ホール
主催:公益社団法人日本地球惑星科学連合
Date:8-13 April 2018
Place: Vienna, Austria
IAEA-Proficiency test "JAPAN Proficiency Test"に関するお知らせ
[2016.10.12掲載]
■報告書
"Emergency Response Proficiency Test for Japanese Laboratories: Determination of Selected Radionuclides in Water, Soil, Vegetation and Aerosol Filters", IAEA Analytical Quality in Nuclear Applications Series No. 29.
[2016.3.28掲載]
■JAPAN Proficiency Test 2016の開催について
JAPAN PT 2016では、IAEA Seibersdorfで準備された水(2個)及びトウヒの葉(1個)の試料に含まれるガンマ線放出核種及びα線・ベータ線放出核種の定量を行います。
それ以外に、既知の濃度のガンマ線放出核種を添加したクローバー試料が含まれますので、放射性核種の測定方法の確認に使用していただけます。
実施スケジュール(予定)は下記のようになっております。
・参加測定機関へのPT試料配布:2016年5月3~27日
・測定結果の報告期限: 2016年9月30日
※IAEA JAPAN Proficiency Testの開催趣旨等についてはこちらをご覧下さい。
■ 参加登録方法
平成27年度までのJAPAN PTに参加した測定機関には、IAEAより参加登録方法のお知らせメールが届いておりますのでご確認下さい。
参加申し込みは、お知らせメールに記載されている『NAEL Proficiency Test Reporting』ページに直接アクセスしてお済ませください。
JAPAN PTに参加したにもかかわらずIAEAのお知らせメールが届いていない測定機関がございましたら加藤までご連絡ください。
IAEA JAPAN PT 2016の参加登録枠にはまだ余裕があります。平成28年度のJAPAN PTから新たに参加を希望される方は加藤までご連絡ください。
■ お申し込み・お問い合わせ:加藤(kato.hiroaki.ka"@"u.tsukuba.ac.jp)""を外して送信してください。
■IAEA 測定技能試験 JAPAN PTについて
環境試料の分析において、放射性核種濃度の定量測定の正確性を高めるため、2012年度よりIAEAの協力の下、「スタンダード試料」の提供を受け、国内の機関にて測定テストが実施されております。
【参加機関数】(2015.10.13更新)
・2015年度:37
:2015年度は、水・玄米・土壌試料を対象とした放射性核種測定技能試験(IAEA-TEL PT-2015-3)が下記の予定で実施されます。
- 登録期間:2015年3月まで
- サンプル配布時期:PT標準試料の発送(2015年9月11日時点)
- 測定結果報告締切:2015年10月9日(予定)
第2回 IAEA-University of TSUKUBA JAPAN Proficiency Testの詳細はこちら↓
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