放射線安全管理部    アイソトープ基盤研究部門

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論文紹介 ~山﨑信哉先生



   Vol.3 河口における放射性セシウムの化学状態


 アイソトープ基盤研究部門の山﨑信哉先生にお話を伺いました。

論文の背景について教えて下さい。


山﨑先生写真 東日本大震災による津波の被害により、福島第一原子力発電所で大規模な放射性物質の漏洩が起こり、放射性核種が環境中のさまざまな場所に沈着しました。この放射性核種が環境中をどのように移動するのか(またはしないのか)を化学的な視点から明らかにすることは重要と考えています。事故後数年たった現在も問題となっているのは半減期30年程度のセシウム-137です。この放射性核種が土壌に負荷されると特定の鉱物と強く相互作用することが知られています。一方で、陸域に降り注いだセシウム-137が河川を通じて海に流れ込む場合、どのような化学形態(水溶性なのか不溶性なのか、など)であるかを知ることは、海洋生物への影響などを考える際に重要であると考えられます。

 そこでこの研究では、河口域で採取した堆積物を採取し、その中に含まれる放射性セシウムの存在状態を分析しました。また、この堆積物が海に出た場合の影響を知るために、人工的に再現した海水を使って放射性セシウムがどの程度堆積物から溶出するかを分析しました。

分析対象はどのようなものですか?


 この研究で分析対象としたのは、福島県大熊町にある熊川河口で採取した粘土質の堆積物です。この試料は河口域の砂浜の上で見つかった堆積物で、河川が増水した時に流されてきた懸濁性粒子がその場に残ったものと思われ、明らかに砂質とは異なることが分かります。

 

試料採取

<写真説明> 林床から仰ぎ見たヒノキ林の樹冠(栃木県佐野市)熊川河口に堆積した粘土質の塊(熊川海水浴場にて撮影、2014年7月)

 

具体的にどのように調べたのですか?


 まずは堆積物中に含まれる放射性セシウムの量を測定しました。また、堆積物がどのような鉱物で構成されているかを、エックス線を用いた分析手法(XRF、XRD)や、極微小なものを観察できる電子顕微鏡を用いて分析しました。さらにその後、連続化学抽出と呼ばれる方法で、存在状態別のセシウム量を分別定量しました。この操作は、セシウムがどのような形で土壌と結びついているかを明らかにする手法です。さまざまな種類の鉱物を順序よく溶解させることで、鉱物がとけた時に同時に溶出してくるセシウム量をガンマ線スペクトロメトリーを用いて定量しました。最後に、堆積物を人工海水にさらし、放射性セシウムがどの程度溶け出してくるかを明らかにしました。

どのような結果が得られましたか?


 堆積物中のセシウム-137の量は事故時換算で30,000Bq/kg程度でした。この堆積物は、石英やセシウムと強く結合するといわれている粘土鉱物などを主成分としていました。そのサイズはおよそ数十ミクロン(百分の一ミリメートル程度)でした。また、連続化学抽出実験の結果、およそ90%のセシウム-137が堆積物から抽出されませんでした。放射性セシウムは土壌に強く保持されたまま環境中を移動することが予測されます。また、堆積物を人工海水にさらした結果、3.4%のセシウムが脱離することが示されました。これは海に存在する陽イオンによる効果だと考えられます。しかし、ほとんどの放射性セシウムは、海に運ばれた後も不溶性(粒子中に存在)であることが分かりました。

今後の計画について教えて下さい。


 論文の実験では、ほぼ1日で放射性セシウムの堆積物からの溶出がほぼなくなることが分かりました。現在は、海に流されたこれらの懸濁物質について、長い時間スケール(~1年)での放射性セシウムの脱離挙動について引き続き調べています。また、懸濁物から放射性微粒子がいくつも観測されました。これらは天然に見られる鉱物とは異なる性質を持つことが他の研究で報告されてきています。これらの微粒子がどのような影響をおよぼすかについても追跡調査を行っているところです。


Shinya Yamasaki, Junpei Imoto, Genki Furuki, Asumi Ochiai, Toshihiko  Ohnuki, Keisuke Sueki, Kenji Nanba, Rodney C. Ewing, Satoshi  Utsunomiya (2016) Radioactive Cs in the estuary sediments near Fukushima Daiichi Nuclear Power Plant. Science of The Total Environment, 551-552, 155-162, DOI:10.1016/j.scitotenv.2016.01.155



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