同位体宇宙地球化学とは?
同位体宇宙地球化学とは?
本部門では安定同位体を主に用いた宇宙地球化学の共同研究を推進していきます。
宇宙地球化学とは?
化学的手法を用いて、地球で起きた(起きている)様々な現象を読み解く学問分野が地球化学(Geochemistry)です。隕石などの地球外起源物質を対象とする宇宙化学(Cosmochemistry)と合わせて「宇宙地球化学」と呼ばれています。
化学的な手法とは?
宇宙地球化学では、主要元素・微量元素の化学組成、それらの存在形態(化学種)、それぞれの元素の同位体組成などを分析し、得られたデータをもとに議論が行われます。
同位体(アイソトープ)とは?
同じ元素にしばし質量の異なる原子が存在します。このような質量の異なる原子を同位体と呼びます。
原子は、中心に存在する原子核とその外側に存在する電子から構成されています。原子核は正電荷を、電子は負電荷を持っています。原子核はさらに正の電荷を持つ「陽子」と電荷を持たない「中性子」という粒子から構成されています。陽子数が元素の性質を決めますが、同じ陽子数で中性子数の異なる原子が存在し、それらが同位体と呼ばれます。同位体は、同じ元素として振る舞いますが、状態変化や化学変化に伴う反応速度の違いが質量差により生じることが知られています。このような差が同位体組成の違いを生むことになります。また、陽子数と中性数には安定な原子核を保つことのできる比率があり、そこからずれて中性子数が大きすぎたり、陽子数が大きすぎたりすると、その同位体は不安定となり、放射壊変をして安定同位体(Stable Isotope)に変わります。このような不安定な同位体は放射性同位体(Radioisotope)と呼ばれています。
炭素(元素記号C)は陽子数が6で特徴づけられますが、中性子数が6, 7, 8の原子が存在します。これらが炭素の同位体と呼ばれ、質量数(陽子と中性子の数の和)を用いて12C, 13C, 14Cのように表現されます。このうち12C, 13Cは安定同位体、14Cは放射性同位体です。14Cは放射壊変により安定な14Nへと変化します。宇宙地球化学ではこのような放射性同位体を利用した年代測定法が確立されています。
質量分析計
それぞれの元素の同位体の個数比は同位体比と呼ばれています。例えば、炭素の12C, 13Cの個数比を13C/12Cのように表現します。このような同位体比の測定方法はいくつかありますが、質量分析計がよく利用されます。
ここでは固体試料に含まれる有機物の炭素同位体測定を例として測定の概要を説明します。
試料に含まれる炭素は酸化することでCO2ガスへと変換されます。このCO2は真空容器に導かれ、そこでCO2+というイオンに変換されます。CO2の場合には、電子をぶつけてCO2分子から電子を一つはぎ取る操作が行われます。このようなイオンを生成するプロセスは「イオン化」と呼ばれています。CO2+イオンは真空容器内で電場により加速され、磁石で挟まれた空間に導かれます。磁場によりイオンの進行方向が曲げられますが、重い同位体を含むイオンは曲がりが小さく、軽い同位体を含むイオンは曲がりが大きくなります。この質量の違いを利用することで同位体を分けて検出することができ、検出数をもとに同位体組成を決めることができます。
具体的な研究内容、装置の概要に関しては下記を参照ください。
連続フロー型質量分析計による固体試料の炭素・硫黄同位体比分析:高精度分析のための改善点
https://doi.org/10.14934/chikyukagaku.42.201
同位体質量分析計を用いた環境変動解析
https://doi.org/10.5702/massspec.14-59
安定同位体組成を利用した環境変動解析
https://doi.org/10.20665/kakyoshi.66.11_538